Cinema Life Career

映画紹介を中心に、仕事観やキャリアについてなど、世界観や見えていること、日常の中で感じていることを徒然なるままに綴っていきます。

【映画】ホットギミック ガールミーツボーイ 〜3つの初恋。一つの答え。〜

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ホットギミック ガールミーツボーイ

3つの初恋。1つの答え。

これを10代で観ることができていたら、もっと早くに自分の世界が変わっていただろう。
自分の世界というと語弊があるか。
この世界を自分のものとしてもっと肯定的に、前向きに自分の人生を歩めるきっかけになっていたに違いない。
もしそうじゃない方がいたら、10代だけでなく色んな世代の方々に観て欲しいです。

自分の意思でその世界をどう見るか、その上でどう生きるか、何を選んで何を捨てるか。

10代の大半の悩みを占めるであろう恋愛において、タイプ(性格)も境遇もスタンスも関係性も雰囲気も、何もかもが違う3人の男の異なる愛のアプローチに振り回される一人の少女とその少女が空っぽで卑屈になりがちな自分と慣れない恋愛に悩みもがきながら、それでも向き合っていくことで、徐々に変わっていくきっかけを掴んでいき、一つの選択の決断をするまでの過程が描かれている。

その独特の描き方と作られる雰囲気に物凄くのめり込むことができる。
音楽の挿入と遠近と高低の使い分け、ロケーション、情景と全てが絶妙でどこか新しい。
ずっとこの世界に入り浸っていたいと本気で思えた。

他者と関わりながらも自分の意思や感情に従って生きることそのものに対しての尊さとそこに至るまでの葛藤と難しさとその過程にある悩みをしっかりと描きながら、(ある人に対しての)確かなる一つの答えに落とし込んでいく類い稀ない傑作。
誰かには全く刺さらないだろうが、誰かには物凄く刺さる、ある人に対しての作品。

元来それだけ誰かと生きるって、一緒になるって、複雑で覚悟がいることなんだというのが、本作を観たらひしひしと伝わってきていて、物凄い刺激を五感に与えられた感覚。

よく出てくるのバカと宇宙。
バカというのは自分を確立できていないということ、自分が何者かがわからない状態であると捉えたが、それだと他者もその人のことがわかるわけがないし、だからこそその人に宇宙を感じるのである。
無限の可能性が広がっているように、未知のその人だけに秘めている感情と気持ちと心があるように。
バカであれば何者にもなることができるというそれで悩んでいる人への最高の後押し。

それでよいし、むしろそれこそが、自信をつけて自分を肯定して前向きに生きることができるようになっていき、それをベースに自分を更新しながら創っていくことができ、さらに豊かな人生へと繋げることができる。
何かしらに落ち着くのでなく、ずっと自分を探求し続ける。
それはあらゆるものに触れて、あらゆる経験をして、大前提その上で自分の感情と意思に正直になって、一つ一つの決断を出していくことでできてくる。

日々の選択に対して、そんなに深く悩んだり考えることをするなんて生きづらいように思うかもしれないけど、その過程で自分に向き合うことで、その先に確かに何かに気づけて、何かを新たに知ることができて、何かが変わっていく。
その一連の人間ならではのめんどくささに対して、尊いほどのレベル感でありったけの肯定と後押しをしてくれる。
そういう自分を否定するのではなく、むしろそれでいいんだよと、その方がいいんだよと。

恋愛の前にまずは自分がどう生きたいか、どうなりたいか、どうありたいか、何がしたいか。
とことんにまで自分の想いに忠実になりながら、それを利害関係なく一緒に作って実現していけると、そこに安心感や安堵感があって、やっとその人と生活を共にしたいとなる。

それでも別にそれ以外の要素にも惹かれて取捨選択で悩むことをも否定しない。
色んな形があるが、山戸監督が出した一つの答えは、まず大前提としてこの世界は自分のものであるというベースを蔑ろにしないことの上に、全てのプラスアルファが乗っかってくるという価値観であった。

誰のものでもないし、誰にも守られないし、誰にも奪われない。自分だけの世界と自分だけの人生。
他者との関わりを通してそれを知りながら、まずは自分であり続ける覚悟、本当の意味で自分を生きるという選択。
次にどんな恋愛が待っているのかはわからないが、心の底から初を応援したいと思えた。
その先に待ってる恋愛はきっともっと素敵なはず!

21世紀の女の子、離ればなれの花々へ、がきっかけなのか、より幅と深さが生まれて、価値観により世界観が確立されていて、覚醒しているように感じる。

誰かのための作品は、理解できたらとてもハマるし、ハマらない人にはハマらないと思う。
でも山戸結希監督の作品はそれでいいんだと改めて思えた。

宇宙感じたい。

P.S.
キャストも最高によかったです。
特に主演の堀未央奈、ドSさとその裏側の二重人格を演じる清水尋也、抑えが物凄く効いてる間宮祥太朗、歪んだ愛情の中で諭していく吉岡里帆、初の逆を生き個を確立しようと奮闘する桜田ひより
そして全体的に挿入曲カノンが最高で、空気をこれでもかというくらいに作っている。
とにかくたまらない。こんな奇跡、あってよいのか。

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【映画】新聞記者 〜日本映画が変わる瞬間〜

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新聞記者

この映画を、信じられるか?

東京新聞記者・望月衣塑子の同名ノンフィクションを原案に、若き女性新聞記者とエリート官僚が真実を明らかにするための対峙と葛藤が描かれている作品。

まずは今作を全国公開で放映することができたこと、ここまでリアルに裏側を描く作品として創り上げたこと、本当に並々ならぬ努力の先に実現したんだろうと思うと、それだけで感慨深いし、確かに何かが前進していっている兆しを感じられる。

藤井監督は本当にブレない。
今作は今までの作品と比較して、よりスケールの大きい、それでいてノンフィクションに近い内容で、正義と正義のぶつかり合い、権力者(強者)と非権力者(弱者)の力関係、非権力者の正義を貫くこととそれにより失うものの間で揺れる葛藤がしっかりと描かれている骨太な作品となっている。
今作を創り上げた気概と熱量に、ただただ感服せざるを得ない。この若さで本当に尊敬します。

念のためですが、自らはどの党の支援者でもないので、あくまで客観的で中立な立場での個人的な意見です。

テーマとしては、現政権のモリカケ問題をベースに描いているであろうことがわかる。
さらに伊藤詩織さんの準強姦訴訟にも触れられている。
これが日本国家の行政の裏側で起こっていることであると信じたくはないが、最近の一連の騒ぎを見ると本当に現実に裏側で行われていることなんだろうとも思う。そう思いたくはないが。

裏側で粛々と推し進められている国家の正義はどんなものなのであろうか。
日本という国の一員として、日本が好きな一国民として知らないといけないことであろうが、最近はあまりこの辺りに対しての情報に意識が向いていなかった。
大学時代は、政治に携わるNPO法人に所属していたので、わりと関心が高かったのに、社会人になって徐々に関心もなくなってきていたことに、改めて危機感を覚えた。

大体の人は普段あまり意識はしていないと思うが、確かに日本国家の下で生きている、もはや生かされていることに対して、改めてちゃんと意識して日々を過ごさないといけないと感じる。

裏側の書類改竄で行われていた先に、表向きには意義のありそうな無難に見える大学の設立が、本当は全く別の目的、それがまさかの軍事利用として使われるという真実が徐々に明らかになっていくのが今作のミソなのだが、それが(真実かは結局わからないものの)モリカケ問題と重なってしまったときに、そのとんでもなさがわかる。

国民に知らされるべきことが知らされていない怖さ、それはあくまで国民のため、真の目的を伝えたら国民が騒いだり心配しかねないからそうしてるのか、ただの権力者たちの利益のためにそうしてるのか。
国の平和と安定のためという表層的で抽象的な名目は、本心なのかそうでないのか。
どちらにせよ説明責任は確かにもっとしっかり果たされるべきである。

いずれかの国の中の一国民として生きなければならない私たちは、基本的に生まれた時点でほとんどの人は生きていく国を決められている。
どこかの国の一員として生きなければならないことの歯痒さ、自立して生きることができる人にとって国は何のためにあるのか。

国を統治しなければいけないのは、それこそ人間が愚かであるからという前提があるのだろうが、そのトップの真善美や正義がズレていることがあるとしたらそれが一番危ない。
それでとんでもないことに巻き込まれるなら、国に属することなく自らの世界を構築していく方がマシなくらいだ。
みんなが仲良くWin-Winの関係を構築できればいいのに。

国に信じ頼りすぎながら生きることに対しても警鐘を鳴らしているような国を治める者たちの危うさ。
そこに守られなくても生きていける人、それらとは無縁に平和に生きていたい人までもが、搾取されているのに気づかずに税金を投入し、いつのまにか国のよくわからない正義に巻き込まれているのが、信じたくはないが真実なのか。

結局国もそれ以外の組織も、それぞれの正義を持っており、それは権力者が握っていて、それは大きくて強ければ強いほど、そこに異なる正義を反映させようとしても難しいことがよくわかる。
権力者が正義の実権を握っており、それ以外はその正義の下にコントロールされ、搾取される構図は大きくは変わらないし、壊すのは物凄く難しい。
少数派が多数派に呑み込まれていく構図。

民主主義すらも綺麗事なのか。
これが現実なら、みんなが共通の真善美に従って、自分たちの世界を構築できたらいいのにと思う。完全なる理想ではあるのだが。
どちらにせよ正義か、それ以外の守りたいものか、になるのはいたたまれない。

ラストはあえてあそこで終わったのか、あそこで終わらざるを得なかったのか。
これはしばらくもやもやと考えさせられる。
でも今考えるべき問題でもある。

P.S.
シムウンギョン、松坂桃李、本田翼の演技がそれはもう素晴らしすぎる。
松坂桃李は葛藤する人物を演じたら右に出る者がいないですね。
今作は本当に日本国民全員に観て欲しい作品。日本の映画が変わる瞬間!

#映画#新聞記者#藤井道人#望月衣塑子#シムウンギョン#松坂桃李#本田翼#岡山天音#郭智博#高橋努#西田尚美#高橋和也#北村有起哉#田中哲司#邦画#映画好きな人と繋がりたい

【映画】ウィーアーリトルゾンビーズ(WE ARE LITTLE ZOMBIES) 〜生きてるくせに、死んでんじゃねえよ。〜

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ウィーアーリトルゾンビーズ(WE ARE LITTLE ZOMBIES)

生きてるくせに、死んでんじゃねえよ。

青の帰り道の後に本作を観たのはミスったかもしれない。
リトルゾンビーズたちに青の帰り道の7人を見せてあげたいと思った。
まあそんなことをしても彼らには意味がないかもしれないが。

人生が、ダンジョン(そうして私たちはプールに金魚を、)からゲーム(ウィーアーリトルゾンビーズ)に変わった。
抜け出そうとするのではなく、勝とうとする、ゴールが見えない中で。
人生を何かしらに例えて、それを物語と映像に落とし込んでいくのが秀逸。
しかもこれを長編でやってのけてしまうのにまずは恐れ入った。

人間ながら無感情でゾンビのように生きる主人公の中学生4人組をリトルゾンビーズと名付けている。
ゾンビは、感情のない人間のメタファー。

ゾンビにはゾンビの闘い方がある。
感情からは目を逸らし、あくまで社会を理路整然と俯瞰し続けて、勝手に切り込んでいく。
そこにはただその状況が語られまくり、大人の隠していた事情がどんどん露わになってくる。
ゾンビーズは内輪の中だともはや空気を読むことも必要ないからただただ思ってることを暴露しまくる。
これが感情のない人から見た今の世の中の現実であるかのように。

そしてゾンビを生み出してるのはただならぬこの現代におけるネガティブが蔓延している現実であり、それは感情を持たないほどに未来への希望をなくす。
そこから喜怒哀楽がわからない無機質さ、無の状態が生まれ、それはもはやゾンビと何ら変わりがない。

希望に繋がる現実を知っていけば、それはまた変わっていくのだが、そこにも嫌な現実は潜んでいて、それが露わになるとより救いをなくしていく。
リトルゾンビーズが変わるきっかけとなるバンド活動も、大人の事情でこうも簡単に潰されるつまらない世の中。

それでもリトルゾンビーズは冷静だ。
あくまで理路整然とその場を説明的にやり過ごす。
そんなこと全てお見通しで、一喜一憂していたら生きていけないから。
無であること、むしろマイナスであることの強さが弾けてる。

ルールが増えると当たり前が多くなり、当たり前が多くなると喜びや楽しみが減る。
それがデフォルトの状態で生きているから、感情とは無縁な楽な世界を自分たちで作ってその中に籠って生きたくなる。
そんな世の中とゾンビのような人間のメタファーがこの映画であり、リトルゾンビーズである。

この映画をひとことで言うととてつもなくエモい作品なのだが、そう言われることを見越して、ポイントポイントに「エモいって古っ!」という突き刺さる台詞がぶっ飛んでくる。
思考停止するなよと、そんな軽い言葉に落とし込むなよと、もっと向き合ってちゃんとした言葉に落とし込めよと、言わんばかりに。
でも逆にそんなあらゆるものが説明的すぎる世の中もおもしろくないよね、という逆説的なメッセージ性も感じる。

つまらないそれなりのものに溢れてるから、リトルゾンビーズがあんなに脚光を浴びることになるし、中身のない一風変わった何かが注目を浴びては消費されて、すぐ飽きられて、消えていく。
いつまでそんなことを続けるんだというのが監督のメッセージだろうか。

自分の感情と思考のどちらもを持ちながら地に足をつけて前に進んでいくことが、幸せに生きるということ。
それを普遍と捉えて表現し、それぞれの道をリトルゾンビーズが歩んでいくラストが印象的。あくまで自分がそう感じただけだから真意はわからないが。
人生は死ななければ何度でもコンティニューして再スタートできる。

無機質に鳴り響いた「ウィーアーウィーアーリトルゾンビーズ〜♪」が頭から離れない。
何でこんな音楽に侵されたのかもわからない。
でもこれを考えなくちゃいけないんだろうなと。
まだまだ知らないといけないことが、たくさんありそうだ。

長久允監督は元電通で、こういう作品を作られるのがなかなかに闇深くておもしろい!

まあ評価はわかりやすく分かれる作品(受け付けない人は全く受け付けないという意味で)だろうが、逆にそういう人も交えてこの映画について語り合うだけでも何か意義深い感じがする秀作だった。

絶望だっさ。

P.S.
イクコ役の中島セナが13歳というのに驚愕!
とてつもない逸材が!
あとは脇を固めるキャストがなかなかに豪華でとてもよい。
特に池松壮亮が最高でさすがすぎる!笑
青の帰り道後にこれを観たら高低差が凄すぎて、頭が整理できず追いつけなかったw

#映画 #ウィーアーリトルゾンビーズ#wearelittlezombies #長久允 #二宮慶多#水野哲志 #奥村門土 #中島セナ #佐々木蔵之介 #工藤夕貴 #池松壮亮 #初音映莉子 #村上淳 #西田尚美 #佐野史郎 #菊地凛子 #永瀬正敏 #邦画 #映画好きな人と繋がりたい #埋もれさせるなゾンビーズ

 

【映画】きみと、波にのれたら 〜波に乗ることの意味〜

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きみと、波にのれたら

守りたい人がいる。会いたい人がいる。

試写会にて鑑賞。
脚本はわりとよくて、水をうまく使った程よいファンタジックな異世界感と実はこことここが繋がっていてこうなっていく物語性はしっかりあった。
あとは映像と音の綺麗さは言わずもがなでよい。

ただ、なんか物足りない感じというか、何か響くものや残るものがあったかというとそうでもなく、ただただ綺麗に始まって綺麗に終わっていった感じ。
それはそれで全然悪くはないんだけど、そんな感じでした。

おそらく時間の問題(96分の短さ)と感動が増幅されるはずの音楽(や歌)が逆にハマってなくて違和感を感じたからかもしれない。
なんか全体的に波長が合ってなくて、それが悪い方向にいってしまった典型的な例な気がする。
アニメーション作品では、やっぱり映像や音のよさがしっかり物語に相乗効果を生まないとなかなかグッとまでは来ない。

脚本のよさについては、「きみと、波にのれたら」というタイトルに、色んな意味が乗っかっていき、それが今作における最大のメッセージとなっているところである。

サーフィンを主とした映画でこのタイトルなので、何かありきたりな恋愛映画に落とし込まれていくと思いきや、その要素は持ちつつも、本質的には自分と向き合うこと、自分で道を選び前に進んでいくことの勇気の大切さを表現しているような作品である。

波に乗るというのには、実はそういう意味も隠れていて、それが物語が進むにつれて、あらゆることが明らかになっていき、そのメッセージの後押しとなっていく。

地に足をつけて、自分の特性を活かして、納得感を持ちながら、誰かのためになることができることを見つけていく。

普段生きていると生活自体が惰性になったりで、あまり考えずに放置していることが多いことは実は考えてみると意外と人それぞれに上記のようなことはあって、それは自分でなく誰かが気づかせてくれることもある。
自分以外の誰かと向き合うことで、自分と向き合うことにも繋がり、それが見つける後押しになる。

そんな奇跡的な出会いとそれにより変わりゆくヒロインとヒロインを守りながらも諭していく主人公。

そして大きな波に乗り、清々しく前向きに前進していく形で終えていくラスト。
そこまで深い感動があったわけではないが、前向きに一歩を踏み出してみようと思える作品。

綺麗な物語に、綺麗な映像と音。
それだけでも、それはそれとしてよかった。

P.S.
声に関しても川栄李奈ということで注目してて、よかったけど、ちょっと全体的にオーバーな感じはした。
これはどちらかというと演出側に対しての違和感かもしれない。

#映画 #きみと波にのれたら #湯浅政明#吉田玲子 #片寄涼太 #川栄李奈 #松本穂香 #伊藤健太郎 #邦画 #アニメ #映画好きな人と繋がりたい

【映画】町田くんの世界 〜こんな世界を創りたい〜

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町田くんの世界

この世界は悪意に満ちている。
でもーー町田くんがいる。

映画をずっと鑑賞し続けていると、時々どんな映画を今自分は欲しているのかがわからなくなることがある。
最近そんな気持ちになりながらも色んな映画やドラマを鑑賞しているが、今一番鑑賞したかったのはまさしくこれだったんだと心から言える作品に出会えた。それが町田くんの世界

内容としては横道世之介に近いものを感じるが、それによりコミカルなパンチが効いていて、リアリティとファンタジーがうまく融合されている理想の世界、いわばユートピアがそこには広がっていた。
横道世之介の現代版のような作品である。

この世界は悪意に満ちている。
そもそもそれそのものが本当なのか、そうした方が自分が生きやすいからそうしてるだけではないのかと、今一度人の原点に立ち戻らせてくれる。

悪意と善意。
人はいつから悪を求めるようになってしまうのか。
悪意はこの世界を知れば知るほど芽生え、作り上げられていくもの。
善意はこの世界を知らなければ知らないほど芽生え、作り上げられていくもの。
あらゆることを知ってしまうからこそ、善意のもとでなされる行動がおかしいと思われるようになったり、その行動をすることになぜか恥ずかしさを抱くようになってしまう。
比較して自分が優越感や劣等感を抱いたり…。 でもそれが町田くんには全然理解できないのである。

当然である。
町田くんは携帯を持っていない。
町田くんはこの世界のことをほとんど知らない。
町田くんはこの世界とこの世界に生きる人が幼少期のあの記憶のままで止まっている。
町田くんにとってこの世界とこの世界に生きる人は善意で満ちているのだ。

だから町田くんにとって、この世界に生きる人は誰でも好きで、大切な人になる。
だからその人のために助ける。
そしてたくさんの人が救われるけど、家族としての好きと恋愛としての好きに悩まされることになり、時に人を傷つけてしまう。

でもそれは町田くんのせいなんかじゃないのを知ってるからこそ、誰もが自分を責めてしまわざるを得ない苦しみが生まれることが諭されている。

そこで大事になってくるのがイマジネーションである。
いかにその人の気持ちに立って、行動をすることがてきるかどうか。
でもこれも相手を一人に絞る恋愛となると、他の人との関わり方に悩むことになる葛藤もある。
誰にでも優しくしたい思いと愛を独占したい思い(好きな人と付き合いたいという思い)の葛藤。
これがトレードオフになってしまうことに切なさがある。

これはこれで別の悩みとしてしっかりと描かれていて、結果的に猪原にも受け入れられるようになっていくのがよかった。

町田くんには何もなかったからこそ、純粋な善意のみで生きていけていたのである。
人と比較することもないし、自分がどう思われるかどうかはそもそも頭になく、ただただ周りの人たちが好きだから困っていたら手を差し伸べる。
そこには過度な競争に晒されず、相互扶助が前提の上であるからこそあの町田くんが創り上げられたのだろうと推測できる。
スポーツができなくても、勉強ができなくても、自分を否定されない安心感、いわば比べられないことで芽生え育つ心理的安全性。
ほとんどのコミュニティでは、そうなっていないから、現代の世界には町田くんが、町田くんの世界そのものが、ファンタスティックに見えるのであろう。

自分の創り上げたいと思っていた世界は、まさにこの「町田くんの世界」だった。
色んなことを知ってしまっても、この世界のことをとことん好きになれる人が少しでもいるのであれば、小さいコミュニティからでも、徐々にこのような世界を広げていけるのではないか。それを創っていきたい。

映画の中なので、まさしくユートピアではあるが、徐々に変わっていく町田くんを取り巻く周りの人たちを見て、最後にみんなから応援されている町田くんを見て、物凄い心が満たされた。
本当は心の底ではみんな町田くんの世界を求めているのではないだろうか。
そうあって欲しいと思うだけで、現実はそう甘くはないか。どうだろう。

もっと余裕を持って、全てが善意のもとに、生きていきたい。
そのための行動を起こし、そんな世界を現実に創り上げたい。
強くそう思った作品でした。
暫定今年度ベストで好きな作品です。

P.S.
この内容で、さらにこれだけ個性派で実力のあるキャスト陣が、それはもう全員活きまくってる。
前田敦子の拍子抜けしたツッコミセンスと絶妙なコミカルさ、太賀の熱量極まる暑苦しさ、高畑充希の好かれるためだけに生きているような女性像、池松壮亮の悪意と善意に揺れる葛藤、岩田剛典の達観した余裕から来るひん曲がった王様感。
戸田恵梨香松嶋菜々子の諭す優しさ、北村有起哉の器の大きさ。
全てがこの物語に意味を成している。
そこに初々しさのある細田佳央太と関水渚の絶妙な演技。
賛否分かれるとは思うんですが、横道世之介が好きな人は絶対好きになれると思います。

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