Cinema Life Career

映画紹介を中心に、仕事観やキャリアについてなど、世界観や見えていること、日常の中で感じていることを徒然なるままに綴っていきます。

【映画】ユリゴコロ 〜人殺しの私を、愛してくれる人がいた〜

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人殺しの私を、愛してくれる人がいた。
一冊のノートに記された殺人者の記憶。それは運命を狂わす、禁断の真実。

期待を遥かに上回る作品でした。

最近、「愛」をテーマにした作品が多いが今作も「愛」がテーマ。
ただ、今作に至っては、その異常なほどの愛がたくさん詰まっていて、その「愛」ゆえに至る行動や切なさや辛さみたいなものが、ストーリーを追うごとに、どんどん浮き彫りになっていき、あらゆる場面で衝撃を与えられる。

それでも、最後の美紗子(吉高由里子)と洋介(松山ケンイチ)の何かを悟ったようなお互いの笑顔、それこそ愛に心を奪われる、そんな作品だった。

今作を、自然と「怒り」と比較していた自分がいた。
「怒り」は、愛する人が人殺しであるかどうか、いや人殺しでないと信じたいけど信じられない、信じたけど間違っていた、みたいな感じで、人殺しを愛することや受け入れることは難しいことが前提で話が進められていた。
だが、今作は、「人殺しであること」をわかっていながらも、その人を愛してしまうほどの異常とまで言われそうな愛情をしっかりと描写しているのである。

何があったとしても、その人がどんな人であっても、愛することをやめることはできないそんな強い愛が、今作には広がっていた。

それを特に強く感じたのは、言うまでもなく洋介から美紗子、美紗子から洋介に対してではあるが、その主演2人の愛だけではなく、たくさんの愛が今作には広がっている。

美紗子とみつ子(佐津川愛美)の痛めつけ合うことで表現する愛、細谷(木村多江)から亮介(松坂桃李)・千絵(清野菜名)への愛、亮介から千絵への愛。
どれもが、普通ではないよう(異常と言われそう)に見えるが、それはそれだけ愛が強いからであることの裏返しでもあるように見える。

正直、それぞれの理解しがたい愛と今作のじわじわと何とも言い難い何かをえぐり出していくような描写に、途中気分が悪くなった。(特に美紗子とみつ子のシーンが私的にはきつかった。)

重たい映画はたくさん観てきたが、今作ほど気分が悪くなったのは初めて。
それは、描写のみならず、キャストの演技(特に佐津川愛美)と脚本(台詞)がさらにその状況をイメージすることを助長したからに他ならないと思う。

それでも今作は十二分に観る価値があると思う。
完全にフィクションではあるが、愛はどこまで通用するのか、愛に限界はあるのか、そんな答えようのない命題に、作者自らの考え・答えが盛り込まれている。

また、「愛」以外についても触れられている。
ユリゴコロ」とは、美紗子が小さい頃に、「拠り所」を「ユリゴコロ」と聞き間違えたことからの造語になっているが、作者自身、この「拠り所」と似たような、でもそれよりも強い何かを今作で作り、表現したかったのがわかる。
それこそその「ユリゴコロ」そのものが、この人ならではのものであるから、理解し難かったのかもしれない。

その「ユリゴコロ」が年を重ねるにつれて表現ももちろんではあるが、相対するものも変わっていく。
人形→虫→少年少女→みつ子→洋介。

人を殺すことが、美紗子にとってのユリゴコロになっていたのが、洋介との出会いで変わっていく。
今まで感じたことのなかった人の優しさと愛情。
さらに今までの人には感じなかった自分と似て非なる何か。

その似て非なる何かを、美紗子自身が知ったとき、彼女の中でやっと自分がしてきたことの重さとどうしようもなさに気づく。
洋介との日々と子供を産み育てることが、美紗子の「ユリゴコロ」をよい方向に変えていった。
「愛」は良くも悪くもこんなにもすごいものなんだと・・・。
「愛」の最高到達点にたどり着いたような感覚に陥る。

それでいて、愛する人を不幸にすることでしか、愛する人に出会えない美紗子の切なさと「似て非なる何か」がそれでしか見つけられなかった辛さが、美紗子を苦しめてもいた。

そして、設定、内容、深さはさることながら、今作は映画としても非常におもしろく話が展開されていく。
伏線がたくさん張られていて、どんどん回収されていく展開。
内容が理解しがたいとしても、一つの映画としても楽しめるような作品になっています。

途中、ここがこうなるのか、なるほどここ繋がっているのか、という色んな驚きもおそらくあると思うので、中身についてはそこまで触れていません。

キャストの演技もさすがとしか言いようがない。
吉高由里子松坂桃李松山ケンイチ佐津川愛美木村多江 etc...
本当にのめり込めた、圧巻の演技。
これ、演技がダメだったら、絶対にのめり込めなかった。
ちょい役やったけど、清野菜名と清原果耶、子役の平尾菜々花もよかった。
とりあえず佐津川愛美は、個人的に2017年最優秀助演女優賞

きつめの描写が苦手な人にはさすがにおすすめはできませんが、映画っぽい展開やそれでいて深い映画が好きな人には本当におすすめします。
ぜひ、ご鑑賞していただいて、色んな人のレビューが見たい。