Cinema Life Career

映画紹介を中心に、仕事観やキャリアについてなど、世界観や見えていること、日常の中で感じていることを徒然なるままに綴っていきます。

【映画】あゝ、荒野(前編) 〜孤独をブチ壊せ〜

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ずっと楽しみに待っていた今作。
やっぱり期待は裏切られなかったし、むしろ期待以上によかった。
二部作になっているのに、前編だけで上映時間157分とやや長めではあるが、本当に長さを感じないし、そこに2021年の新宿にタイムスリップしたかのようにのめり込んでいける。
設定、それぞれを取り巻く環境と人、ストーリー、心情描写、どれをとってもよい。

 

舞台は、2021年新宿。
性格は違えど、どちらも孤独を感じながら、うだつの上がらない生活をしていた2人。
破天荒な性格で喧嘩が強く、素朴で純粋な男新次(菅田将暉)。
穏やかな性格で、過去のトラウマから吃音になってしまい、自分の言葉で自分の意思を伝えることができない男健二(ヤンイクチュン)。
ボクシングを通して2人が出会うことに。

 

2人には、壮絶な過去がある。
新次は、幼い頃に父親が自殺、母親には捨てられて、キリスト教徒の施設で育てられる。
そこでは、いじめを受けていたこともあり、彼には落ち着くことができる居場所が幼い頃からなかった。
いじめから救ってくれた、兄貴分としてずっと慕っていた男が、一緒に働いていた裕二(山田裕貴)の裏切りにより、下半身麻痺になったことを、ずっと憎んでおり、いつしか復讐しようと考える。

 

健二は、幼い頃に母親を韓国で亡くし、泣く泣く父親モロ師岡)と東京に来たが、幼い頃から父親のDVに悩まされていた。
吃音になった理由は、おそらくこのDVである。

 

なかなか前進できずに自分の意思で何かに本気で打つ込めていなかった2人が、理由は違えどボクシングに本気になり、相乗効果が生まれていく。
救いがなかったところに、手を差し伸べたのが、有名なボクシングジムの人ではなく、まだ誰も生徒がいないボクシングジムを営む堀口(ユースケサンタマリア)。

 

さらにその2人を取り巻く人のストーリーと2021年の新宿のリアルを映し出したかのようなもう一つのストーリーも同時に進行していく。
前半だけでも、それぞれの抱えているものや悩んでいることが伝わってくるし、上手に全体の構図がわかる。
さらによりダークな新宿がそこには映し出されている。

 

新次と健二はボクシングを通し、絆を深めていき、それぞれにとってジムこそが居場所になり、ボクシングこそが生きがいになっていく中、新次を取り巻く人の中の一人の女性、芳子(木下あかり)と再び、運命かのように出会い、お互いを深めながら付き合うことに。
その前(最初に会ったとき)に見事に騙されたことに関しては、新次自身が彼女自身を理解し受け入れることで、そのときに抱いていた苛立ちは、助けたい、受け入れたいという愛に変わる。

芳子は、東日本大震災の被害者であり、それこそ母親が生きているかわからない状態で、東京でその日暮らしの生活をしていた。

 

さらに、もう一つのストーリーは、自殺を亡くすために奮闘する大学生のストーリー。
自殺にまで至る理由は何なのか、それはどうしたら防ぐことができるのか、その本質を掘り下げようとするが、なかなかそこに辿り着けない。
フェスという形で、あんなショーを目論む点やそこで明らかになるそれぞれの自殺志願者の問題、そしてドローンを使っての魅せる自殺なんかは、2021年新宿のリアルを見ているようで怖かった。

 

2021年、自殺者は今以上に増えそうだし、問題も今以上に増えてさらに深刻化することが予想される。
東日本大震災問題、介護問題、自衛隊の自殺問題、浪人問題、社会格差問題。
今作で出てくるのは、この辺りの問題。

 

さらに、絆、居場所、師弟関係、複雑な親子関係、復讐、努力、才能、喧嘩、闇金などなど・・・
テーマが多くて一作品にこれだけ詰まっていて、人間模様の描写も重厚感がある。

また、設定は未来なのに、全体的には昭和感漂う雰囲気なのも個人的には好き。

 

アンダーグラウンドな世界の中で、もがき続けるそれぞれを描き、少しだけ希望が見え隠れしてきたようなラスト。

 

復讐のその先にあるものは何か、本質のその先にあるものは何か、愛のその先にあるものは何か、自殺のその先にあるものは何か、そしてそれぞれのストーリーとその関連性はいかに・・・

 

後編でまだまだ伏線が回収されたり、それぞれのストーリーの関連性により深みが出たり、まだ明らかになっていない人たちの過去に触れられたり・・・そして、そこに希望がどれだけ通用するのか、が観れるような気がして、非常に楽しみ。
新次と母、健二と父もどうなっていくのだろうか。

 

キャストも全員渋くて、この難しい世界を上手に作ってくださっている。
これは邦画好きにはたまらない映画に違いない。
菅田将暉主演男優賞じゃないかこれは!