Cinema Life Career

映画紹介を中心に、仕事観やキャリアについてなど、世界観や見えていること、日常の中で感じていることを徒然なるままに綴っていきます。

【映画】愚行録 〜そこには、善意も、悪意もない〜

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仕掛けられた3度の衝撃。
あなたの日常が壊される。
他人を語り、本性を現すのは、誰だ?
そこには、善意も、悪意もない。

妻夫木聡×満島ひかりのW主演。
ずっと楽しみにしていた愚行録。
やっと観に行けました。

日常に潜む人間の醜い部分を余すことなく見せつけられた作品。
普段の人間関係のやりとりの中で生まれていたそれぞれの我慢がどんどん解き放たれていく展開。
色んな立場から、本人には直接言えないけど、記者には言える陰口の横行。
まるで学校内のいじめの前兆のような飲み会での愚痴のような・・・
そこには、ある人を悪者に仕立てようとする、人間の嫌な部分が露わになっていて、性善説で生きていきたい自分にとって、ぐさぐさと刺さってくる内容でした。

序盤から色んな立場の人々の愚行が晒される。
主人公の田中武志(妻夫木聡)と田中光子(満島ひかり)兄妹。
どちらかというと、悲劇のヒロインのような立場の兄妹にも愚行があった。
不気味な音楽とバスの中を色んな愚行を舐め回す様に回っていくカメラワーク。
いきなり田中武志が席を譲れと言われた後の行動に軽めの愚行。
その後、絵に描いたように幸せな家族を襲った一家惨殺事件の取材を通してわかる様々な立場の物語から愚行が露わになっていき、パズルの様に事件の真相にハマっていく。

殺害された夫・田向浩樹(小出恵介)と会社同僚の渡辺正人眞島秀和
社会人の中で起こる決して仕事中には露わにならない裏の闇。

殺害された妻・友希恵(松本若菜)と大学同期であった宮村淳子(臼田あさ美)とその淳子の恋人であった尾形孝之(中村倫也)の三角関係から生まれてくる嫉妬や嫌な駆け引き。
大学内ではびこっている内部生と外部生の格差。
友希恵の無意識なのか、意識してなのかがわからないほどの表の顔や振る舞いの完璧さ。
そんな人が、自分に持っていないものを持っている人と出会ったときの羨望とプライドの塊が解放されていく様。

田向浩樹と大学時代に付き合っていた稲村恵美(市川由衣)の切っても切れない気持ち悪い関係性。
もはや開き直っているのか、人の気持ちが全く汲み取れない心がない人なのか、もはやそれすらもわからない理性的すぎるモンスター田向浩樹の想像を超える実像。
自分の目的のためなら、何でもする愚直さ。
商社に就職するために女性に近づく容赦なさ。

そして、田中兄妹の家族との生活のどうにもならない背景からの秘密の存在。
実は繋がっていた田中光子と殺された田向一家の妻友希恵。
原作未読だったため、3度の衝撃は、想像以上の衝撃だった。
実はこことここも繋がっていたのか、秘密とはこういうことだったのか、ミステリーな展開がパズルのようにハマっていくにつれて、人間の愚行がどんどん露わになっていき、ラストは何とも後味が悪い。

まさに人間の愚行を記録したような愚行録だった。
大なり小なり愚行は日常に潜んではいそうだが、この作品はそれがオーバーに描かれている。
完璧の裏の本性、羨望が嫉妬に変わったときの愚行、憧れが絶望に変わったときの愚行、開き直りから生まれる愚行、それぞれにとっての普通や当たり前が違う怖さ、どうにもならない階級社会や格差社会・・・
それぞれが一つの独立した物語としての映画なら、そこまで大きな衝撃にはならなかったが、全てが共存している世界として見ると相乗効果でとんでもない破壊力を生む。

自分がこんな世界観や重たい映画が好きな理由は、このような世界とは一線を置いているからかもしれない。
だからこそ、映画を通してこういった世界を知りたくて、小さくても自分の経験などと照らし合わせて「そうか」と納得させる。せざるを得ない状況に自分をもっていく。

満島ひかりの演技が圧巻。やっぱり自分の中で一番好きな女優です。
ゆっくりと不気味に淡々と嫌な人間と社会を見せつけられるこの作品をぜひ観て欲しいです。