Cinema Life Career

映画紹介を中心に、仕事観やキャリアについてなど、世界観や見えていること、日常の中で感じていることを徒然なるままに綴っていきます。

【映画】ぐるりのこと。 〜夫婦だからこそわかちあえること、寄り添い合えること〜

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めんどうくさいけど、いとおしい。
いろいろあるけど、一緒にいたい。
グッとくる。

「夫婦」であることのよさ、辛さ、寂しさ。
「夫婦」だからこそ気づくこと、気づかないこと、考えてしまうこと、見逃したいけど見逃せないこと、向き合わないといけないこと、考えないといけないこと、問題、そして寄り添って互いを認め合えること。

最近夫婦や結婚のよさから離れていたが、この作品で夫婦ってよいものだなと感じた。
というよりも、これが夫婦のあるべき姿だなと。
やはり夫婦になることにおいての重要な部分は変わらないし、それがより大事だとも思えた作品。

「ぐるり」とは、身の回りで起こる様々な出来事を指す。
この作品は、1組の夫婦の10年間の軌跡を中心に、その回りで送る様々な夫婦の出来事、佐藤カナオ(リリーフランキー)の仕事柄、回りで起こる社会の出来事を緻密に描き、社会の広さと夫婦の狭さを対比させながら、夫婦として大事なことは何かを伝えてくれたような気がする。
個人的にはそんな受け取り方。

佐藤カナオと佐藤翔子(木村多江)は、経済力は乏しく、普通よりやや苦しめな生活をしているも、控えめにゆったりと暮らしていた。

冗談を言い合ったり、細かく決まりを決めていたり、新郎新婦の頃は、お互いがお互いを思っていることが、観ていて伝わってきていたが、徐々に無言の衝突というよりも、我慢することによって生まれるストレスが翔子に溜まっていくのがわかる。

さらに、第一子の死去という悲劇に見舞われ、翔子一人の時間も長くなってきたことから、考えなくてもよいことを一人で考えてしまい、だんだんと視野が狭くなり、自分を責めるように鬱状態になっていく。

夫婦だからといって、言葉を交わさなかったり、行動で示せなかったりすると、不安や我慢からいつの間にかこんなことになってしまうことは、恋愛関係においてもよくあること。

夫婦でも、いや夫婦だからこそ、二人でいることに慣れてしまって、当初のような関係でなくなっていく。

翔子が雨に濡れる中、カナオが声をかけて、お互いの大切さを改めて気づき合ったあのシーンが素敵だった。
本音を言い合えること、「好き」を伝え続けること、一緒にいる意味を考え続けること・・・
そういうのは面倒くさいけど、寄り添いながら向き合うのが大切。
決して逃げてはいけないし、なあなあにしてもいけない。
あのシーンをきっかけに、夫婦に変化が生まれ、夫婦であることのよさが伝わってくるようになる。

夫婦だからこそ乗り越えられること、夫婦だからこそ感じられる幸せ。
この映画では、後半に近づいていくにつれて、それが感じられて、乗り越え寄り添いながらそこにたどり着く過程が、とてもよかった。

「大事だと思える人がいるなら、大事にする。それだけでも幸せなこと。」
「みんなに嫌われてもいいじゃん、好きな人にたくさん好きになってもらえたらそっちの方がいい。」
難しいけど、その通りだった。
(the pillowsのストレンジカメレオンも同じような感覚を歌った曲だったなーと。)

そして、泣くことがイコール優しさではない。
泣くのは義務感でもできる。
理解できないけれど隣にいる、ダメダメでも寄り添い続ける。
それは、その人のことを本気で想っているからこそできること。
それこそが優しさで、カナオはだらしなくはあるものの、本当に優しい人間だと思った。

これで人は救われる。
この優しさには、見習うべきものがたくさんあった。
優しさは受け取る側がどう感じるかの問題だから、提供する人よがりになってはいけない。

対比の使い方が上手で、対比からそれぞれが生きる世界が見える。
夫婦間での二人の対比、佐藤夫婦とそれ以外の夫婦との対比、一人と二人の対比、広い社会と狭い社会の対比、社会問題と夫婦問題の対比。
人は色んな世界の中で、生きているのがわかった。

「人、人、人」と呟くラスト。
たまらなく微笑ましくて、夫婦っていいなーと純粋に思えた。
最初から最後まで現実感あるからよりよかった。

「恋人たち」やこんな作品を作ることができる橋口監督は絶対に優しい。
でもこれは、自分の中では優しいと思っているだけで、他の人がどう感じるかはわからない。

誰かと夫婦になろうとするとき、なったときに、一度ずつこの作品を観返したい。
個人的に橋口監督の作品は間違いない。