Cinema Life Career

映画紹介を中心に、仕事観やキャリアについてなど、世界観や見えていること、日常の中で感じていることを徒然なるままに綴っていきます。

【映画】ビジランテ 〜容赦しない運命が暴れ出す〜

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容赦しない運命が暴れ出す。

 

大ヒット作「22年目の告白」の入江監督の作品。公開初日に鑑賞。

今作は、「22年目の告白」とは異なり、展開やスピードだけで惹き込むわけではなく、非現実と現実のちょうど間くらいの環境下をしっかりと描きつつ、兄弟それぞれの人間的な描写まで深く表現されている重厚な映画である。

入江監督自身の、表現したい思いが込められている。

そのため、見応えは、個人的には「22年目の告白」以上のものであった。

(ただ、これが閉塞的な地方都市のメタファーだとは言いたくはない。)

 

ビジランテとは、法や正義が及ばない世界の中で、市民が自身やその周りを守ろうとする自警集団のことである。

今作は、窮屈で閉塞的な地方都市を、「法や正義が及ばない世界=政府や警察がしがらみなどで全く機能しない、いわゆる無法地帯=ダークサイド」として描かれており、その中で、権力がなく、権力の下で流されながら生きている者が自警集団として立ち向かおうとするとき、そこに希望はあるのかどうか、が表現されている。

 

幼い頃に家を飛び出し失踪した長男神藤一郎(大森南朋)、市議会議員の神藤二郎(鈴木浩介)、デレヘル業の雇われ店長神藤三郎(桐谷健太)の3兄弟を中心に、話が展開されていく。

 

地方都市で暮らしていた3兄弟。

父親神藤武雄(菅田俊)は、閉塞的な地方都市の中で、様々な功績から、市民からも支持されていて、権力を持っている政治家であった。

外からの見え方は非常によいが、家庭では3兄弟に常に暴力を奮うとんでもない父親であった。

 

そんな生活に嫌気が差していた3兄弟。

そこから幼い頃に逃げて失踪した長男一郎、二郎と三郎は一緒に暮らしながら、大人になっていた。

 

父親武雄が亡くなり、土地の相続において、失踪していた長男一郎がいきなり帰ってきたことで、その相続をきっかけに野心や欲望やプライドが入り交じるように、歯車が狂っていき、知らぬ間にだんだんと絶望的な世界が広がっていくようになる。

 

気づかぬ間に進んでいた絶望的な道は、すでに取り返しのつかない状態になりかけながら、様々な場で一気に悲惨な状態へ、それでもいかにも普遍的に政治や新しいことが何もなかったように対比しながら進んでいく展開が奇妙であった。

 

今作では、もちろんのことながら「法や正義が及んでいない」状態があるからこそこの世界が創ることができるのである。(いや、創られてしまうのであると言った方が正しいか)

政治が市民や都市のためにしっかりとなされており、政府や警察がしっかりと正義や安全のために機能するような世界であれば、このようなことが起こることはないはずだ。

取り返しがつかなくなる前に、事態は収束し得るだろう。

 

そう考えると、法や正義が及ばない世界ほど怖いものはない。

性善説に立つと一般的な法や正義なんてものは必要ないとでも言えようが、今作は圧倒的に法や正義が及ばない世界を性悪説の観点から描かれているから、胸糞悪い展開となっており、好き嫌いがわかれることであろうが、大なり小なりで現実を見るという意味では、よい作品であるとも言える。

 

周りのために向かい合っていこうとするその意思と行動は、無惨にも権力の前ではいとも簡単に屈してしまう。

長男一郎が過去の遺産として守りたかった由緒正しき土地、二郎が土地を得ることで守りたかった地位と家族とプライド、三郎が土地を譲ってもらうことで守りたかった大切な人たち、それぞれの守りたかったものをこんなに簡単に崩してしまうような利己的なそれぞれの権力が為してしまう結果は、容赦がなさすぎる。

 

守りたいものがあるからこそ、そこから逃げたいのに逃げられない。

逃げられないし状況を変えたいのに全く変えることができないし、むしろ事態は悪化していくばかりで、どうしようもなくなっていく。

入り込めば入り込むほど、まるで圧力鍋の中で熱し続けられるような感覚に陥り、気分が悪くなる。

 

救いはほとんどなかったが、あったとすると、三郎が守りたかった人たちを守れたことであろう。

二郎が、背徳感極まりないけど、出世コースを外れなかったことであろう。(いや、これは逆にそれを背負いながら生きていくという辛さがあるという意味では救いだとは言い難いかもしれない)

このような世界で次期権力者になり得る政治家の妻(篠田麻里子)の救われなさとその状況下でありながらの覚悟は目を見張るものがあった。

 

ここまで極端なことは日本の中にはないだろうが、世界を見渡したらもしかしたらあるかもしれない。

世界観が狭ければ狭いほど、利己的な権力が全てを支配するのだから恐ろしい。

 

先日鑑賞した「凶悪」のリリーフランキー役が、より多くの人を動かすことで成り立ってしまったような嫌な世界。

 

入江監督は、「地方都市での息苦しさ、ダークサイドを描きたかった。」と今作を作ったみたいではあるが、ダークサイドに振り切れて、描きすぎている。恐ろしい。

 

そして、キャストが本当に見事である。

主演の大森南朋鈴木浩介、桐谷健太の演技に本気を魅せられたような気がした。

そこに、篠田麻里子が難しい役柄だったとは思うけど、思った以上に迫真の演技で、全然アイドルじゃなく、もう女優だなーと思った。違和感がない。

新人含め、脇を固めるキャストの方々の演技も物凄くよかったです。