Cinema Life Career

映画紹介を中心に、仕事観やキャリアについてなど、世界観や見えていること、日常の中で感じていることを徒然なるままに綴っていきます。

【映画】凶悪 〜知るべき闇は、真実の先にある〜

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知るべき闇は、真実の先にある。

白石監督の初長編作品。
実際に起きた連続殺人事件の「上申書殺人事件」を、獄中の死刑囚が告発、その真相を新潮45編集部が暴き、首謀者逮捕に至るまでを描いた犯罪ドキュメント『凶悪 -ある死刑囚の告発-』を、映画化した作品。

原作をもとに映画化されつつも、白石監督が入れたかった人間模様や社会のあれこれが入っており、没頭できた。

今作は、スクープ雑誌「明潮24」の記者藤井修一に山田孝之、逮捕された死刑囚須藤純次にピエール瀧、「先生」と呼ばれている不動産ブローカー木村孝雄にリリーフランキー、藤井修一の妻で親の介護に疲れていた藤井洋子に池脇千鶴と、演技派揃いの俳優陣がキャスティングされており、その4人が中心に話が展開されていく。
まずは俳優陣の好演(怪演)に脱帽、完全に入り込めた。

記者の藤井が死刑囚須藤からの告発から取材を進めていく中で見えてくる今まで闇に消えていたもう一つの真実。
その真実を追っていく中で、それぞれの人間模様が見えてくるわけだが、その濃厚な人間模様の描写についつい見入ってしまう。

純粋すぎるがゆえに悪の方向に誘導されながらそこから離れることができなくなる木村に動かされていた各位。
情に厚すぎるがゆえに、仲間への想いが強すぎ、すぐに周りが見えなくなる須藤。
親の介護に疲れ果てるし、夫は逃げてばっかりで、だんだんと正常な判断ができなくなってくる洋子。
人間の人間たらしさが見えてくる様々な描写とは裏腹に、記者藤井と首謀者木村の異常感、怪物感がより目立っていて恐ろしかった。

普通に見える人間にも、こんな一面は誰にでも潜んでいるとでも言いたいかのような描写が怖い。
記者藤井に関しては正義を振りかざしながら、自分を守ろうとしているだけに見えて、出会ってしまった放っておけないことに関してはのめり込むのに、解決しないといけない他の人の事象については、背負わせるだけで深く考えることもしない。
この辺りは夫婦関係のひずみの原因として、普通の家庭でも起こっていそうだなと思った。
罪悪感から逃げようと解決を後回しにしていることが、実際に洋子の発言からもわかり、とにかく自分を守るのに必死な姿が印象的。

木村に関しては、人殺しを楽しむような異常さ、人の心や感情を持っていないのかと思うほど、浮き沈みしない人間として描かれていて、彼が一番怪物に見えた。
本当に何を考えているかわからず、ただ頭だけはとてもよく、外面もいい、間違いなく世界で一番恐ろしいのではないかと思うほどの人物像の姿だった。
こういう人が多くの人を動かせるようになると、破滅的なことが起こる。

ストーリーが展開されていくことで、スタートに起こっていたそれぞれの事件の背景と真相が露わになっていく描き方は、映画としてもおもしろく、グロ描写を除けば色んな人に勧められる映画でもある。
(だからこれだけ多くの人に観られている映画でもあるのかなと)

執着、快楽、我慢はときに人を狂わせてしまう。
人間というものは掘れば掘るほどに恐ろしい生き物であることが見えてくる。
闇の深さは想像を超える。
そこには蓋を閉めておきたいこともあるが、今作はそれを許さない。
むしろ誰にでもこんな狂気は潜んでることを案に示そうとしている。

人間とは何が備わっていれば人間なのか、人間らしさとは何なのか、鑑賞者に問われているような作品でもある。

まさにタイトルの通り、様々な「凶悪」を見せつけられます。