Cinema Life Career

映画紹介を中心に、仕事観やキャリアについてなど、世界観や見えていること、日常の中で感じていることを徒然なるままに綴っていきます。

【映画】悪人 〜数々の悪人たる人間の一側面〜

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悪人

 

なぜ殺したのか。

なぜ愛したのか。

本当の「悪人」は誰か。

 

起こった事実だけではその人の本当の姿はわからない。

そこに至るまでの背景やその人の心境、状態、過去、そして今。

表には決して見えてこない裏に隠れた真相にこそ、本当のその人の姿があって、そこを無視して起こった事実だけで咎めることはただの自己満足でしかないし、何も生まない。

何が正しいか、何が間違ってるかなんて、そんな簡単に答えを出せるわけがない。

そんなことを強く思った。

 

ただ受け入れ合う、受け入れてくれて受け入れたいとも思えて、それだけで愛が生まれる、生きた心地がする。

離れてしまうとまた生きた心地のしない日常が始まるだけ…だから離れることができない。

そんな関係が祐一(妻夫木聡)と光代(深津絵里)の間にはあり、このような相互を受け入れ合えることだけで満足のできるような愛が生まれるのは、他ならぬそれぞれの日常生活がそもそも生きた心地がしていなかったことにある。

 

今まで認められなさすぎて、何も変わらない負に向いている平凡な日常に、来たる未来への希望も持てない。

そんな2人だからこそ芽生えた愛であり、あの関係であった。

確かにそこ(依存)から始まる愛はちゃんとあって、その歪んだとも解釈されよう2人の関係に感情移入すればするほど、そんな愛の形も認めざるを得なかったし、スッと受け入れることができた。

 

このような関係は得てして周りからは理解されないし、肯定されない。

光代の妹が殺人者といることだけで正気じゃないようなことを光代に伝えるシーンがあるが、大体の反応はそんなところだろう。

そこで問うけど、そもそも正気って何だろうか。正しさって何だろうか。幸せって何だろうか。

普通に家族と暮らして働いての生活が、その人にとっては全くもって幸せでなく、殺人者と関わっているそのときの方が、多幸感を感じられ、自分のことを好きになれることがあったなら、それがその人にとっての正しさであり幸せであって、そこに相手が起こした事実が殺人であったとしても、そもそも関係ない。

だから真相をちゃんと知る必要がある。

 

そんな根底の見逃すべきでない大事な部分を置いてけぼりにせず、ちゃんと描いて過度に正しさを押しつけない今作は本当に素晴らしかった。

李相日監督×吉田修一原作の「怒り」とはまた違った視点で深い問題定義を突きつけてくるこのタッグは本当にすごいなと改めて思う。

 

社会から放り出されたような弱者の愛の絆は無情にもいとも簡単に切り離され、強者は助けてやったぞと勝ち誇ったような顔をする。

祐一が光代の首を絞めたシーンは一緒に逃亡したように思わせないために起こした行動で(自分はそう認識した)、祐一自身も人を愛する心は持ち合わせていたことがそこからわかる。

ただ、あまりにもその機会に恵まれすぎなかっただけで、彼を受け入れる人すらいなかった。

親から学ぶ大切なことを学ばずに育ってしまい、環境に恵まれなかったのである。

そう思うと、祐一だけを咎めることなんて到底できない。

 

そんな中、今作には様々な「悪人」が描かれていて、人によって本当の悪人は誰であるか、の答えは変わりそうだし、全員をそう捉える人もいるだろうが、人間には誰にも悪人たり得る要素は持ち合わせてるだろうことは、今作を観るとよくわかると思う。

それはそうと受け入れつつ意識して、向き合いながら生きるしかない。

完璧な人なんてこの世にはいないし、自分にとって正しいことを行っていても、誰かにとっては誤りになることがあるのだから。

 

衝動に負け、人を殺めてしまった人。

殺人者に一緒に逃げようと抱きしめた人。

自分をよく見せようとするがあまり、自分にとってはどうでもいい人を傷つけて、思い通りにいかないからと腹いせのように、人を陥れようとした人。

佳乃(満島ひかり)は間違ってないと思い込み、真相を追おうとしない人。

大切な人がいることの尊さを知らずに、大切な人がいることや人を踏み台にして馬鹿にする人。

息子を捨てた人。

親族の心を顧みずに取材しようとし続けるマスコミの人。

誰かと関わることを背景も知らずに罵る人。

どれも誰かから見ると悪人なのだが、人としての感情や心、人間らしさがあるからこそ起こることもある、誰もが持っている悪人たり得てしまう要素。

そんなものを人間は知らず知らずのうちに持ち合わせてしまっているのである。

 

できるだけ受け入れようとすること、理解しようとすることで、負が0に近づいていき、正の感情に動いていき、その人の人生が少し楽になったり、幸せになったり、生きやすく生きたいと思えるようになる。

 

そんなことを実感できた。

祐一と光代の愛は本物だった。少なくとも自分にはそう見えた。

最近の人は大切な人がいなさすぎる。

この言葉が刺さる。

 

P.S.

満島ひかり、今作は少なかったけど、存在感がとてもあって、大事な場面で本当によい演技。

妻夫木聡深津絵里樹木希林柄本明の凄さも再認識できる作品。

 

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