Cinema Life Career

映画紹介を中心に、仕事観やキャリアについてなど、世界観や見えていること、日常の中で感じていることを徒然なるままに綴っていきます。

【映画】十二人の死にたい子どもたち 〜死にたいって本当は生きたいってこと〜

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十二人の死にたい子どもたち

 

死にたいけど、殺されるのはイヤ。

 

密室での集団安楽死を望んで集まった12人の子どもたち。

子どもたちと言っても設定は高校生で、年頃の青年である。

子どもと定義づけたのは、若さゆえの不安定さと成人はしていないことへの裏づけか、もしくはそんな意図はなく、ただただそちらの方がキャッチーだからか。

 


前評価がそこまで高くなかったのとタイトルのわりにはミステリー要素が強そうだったので、そこまで期待はせずに鑑賞したが、個人的にはかなりハマった作品だった。

ミステリーとしてのおもしろさもあり、社会派作品としてのよさもあり、自殺という社会問題に色んな視点から考える示唆をいただけた。

 


12人のあらゆる問題を抱えている子どもたちの悩みは、当人以外の人から見たらそんなことで自殺するのは…みたいになりがちではあると思うが、現代の日本での自殺者の数を見るとそこを何も考えずに「そんなことで」と片付けてしまうのも考えものである。

 


おそらく死にたいと思っている大半は、本当は生きたくて、その生きるというのは、本当の意味での自分の人生をポジティブに生きられるかどうかなのである。

 


現代において、自殺のハードルが下がってしまってることも今作のような作品ができる背景としてあるような気がしていて、当人以外にとっての「そんなことで」自殺を懇願する人は、何か訴えたいことがあったり、逃げる手段を知らなかったり、当人にとって大切なことを失ったり、背徳感を持っていたりと、本当に様々なそんなことが積み重なって自殺してしまうことが裏づけとして伝えられている。

 


12人もの登場人物が出てくることから、やはり人物描写ではなくミステリー要素が強く、後追いで真相を追っていく形で展開されていく作品で、確かに人物それぞれの描写や背景の深掘りが薄いので、物語自体に深みがないのは感じられるし、ミステリー要素としてもミステリー慣れしている人にとってはもしかしたら物足りないかもしれない。自分はミステリーそんな観ないので、逆にその観点でも楽しめましたが…

 


多分そんなことは原作を映画化することから想定範囲内だったと思うけど、なぜそのまま12人で映画化したのか。

それはあらゆる理由で自殺を考える人に、踏み止まって、生きる意味と希望と方法について考えるきっかけを与えたかったからではないだろうか。

映画だから時間内におさめないといけないけど、原作はおそらく制限がないと思うので、もっと深みもあってよさそう。

 


物語の中で、死にたい理由を告げていく12人には、本当に様々な死にたい理由があって、深い部分まで描写はされていないけど、それでもそこから各人に対して、その本質の部分をイメージしながら鑑賞を進めていくと感じられることは大いにある。

 


そして自分で死ぬことができずに集団安楽死を求めるということは、やっぱり死ぬことへの怖さがあるからで、どこかで死にたくないと思う感情があるんじゃないかと。

 


自分自身、自殺を試みたことはないけど、何もかもを一人で抱え込みすぎてそれから逃れたいと生きた心地がしなかったことはあって、そのときにSOSを出せてなかったら本当にやばかったかもってことが過去に1回だけある。

今思えばあのときにそれができたからよかったものの、その方法すらもわからず、逃げることもできてなかったら、確かに死にたいとか自殺したいと思わないとは限らないなーと思ったし、実際その気持ちもわかるようになった。

でもそんな自分の経験も他の人にとったら「そんなことで」と言われることかもしれない。

経験してないことをその人と同じ重さで捉えることはやっぱり難しい。でも捉えようと努めることはできる。

 


この作品を観て思ったのは、死を選ぶ前にどうにかして生きられる道を考えてみて欲しいということ。

死を絶対に選択肢に入れて欲しくない。何かしらの道はあるはず。

今作の一連の流れは、そこに気づかせるまでの物語だったとすると深い。

 


自分を過度に追い込んでしまうことは、もちろん環境に恵まれていないことを前提に、やはり自分を取り巻く世界の狭さと少なさにあると思う。

生きる場所はそこだけじゃないし、絶対に関わらないといけない人なんていないし、色んなコミュニティや世界があって、そこにはまた違う人がいるから、死にたくなったらまずは違う世界に自分の身を置いてみて欲しい。

 


美意識や道徳観の存在しない社会の中で、決して罰されない社会の加害者の存在が、多くの自殺者を生む。そこには加害者としての自覚がない者もいる。

この連鎖をどうにか断ち切らないといけない。

 


P.S.

今をときめく若手実力派キャスト陣だからこそ、こういう作品がより広く知れ渡っていきそうなのはよいなーと思うけど、捉え方や受け取り方を間違えたら何も残らない作品になってしまいそうで、そうだとしたら残念。

過度に重く受け止めなくてもいいかもだけど、何かしら考えるきっかけにはなって欲しい。