Cinema Life Career

映画紹介を中心に、仕事観やキャリアについてなど、世界観や見えていること、日常の中で感じていることを徒然なるままに綴っていきます。

【映画】町田くんの世界 〜こんな世界を創りたい〜

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町田くんの世界

この世界は悪意に満ちている。
でもーー町田くんがいる。

映画をずっと鑑賞し続けていると、時々どんな映画を今自分は欲しているのかがわからなくなることがある。
最近そんな気持ちになりながらも色んな映画やドラマを鑑賞しているが、今一番鑑賞したかったのはまさしくこれだったんだと心から言える作品に出会えた。それが町田くんの世界

内容としては横道世之介に近いものを感じるが、それによりコミカルなパンチが効いていて、リアリティとファンタジーがうまく融合されている理想の世界、いわばユートピアがそこには広がっていた。
横道世之介の現代版のような作品である。

この世界は悪意に満ちている。
そもそもそれそのものが本当なのか、そうした方が自分が生きやすいからそうしてるだけではないのかと、今一度人の原点に立ち戻らせてくれる。

悪意と善意。
人はいつから悪を求めるようになってしまうのか。
悪意はこの世界を知れば知るほど芽生え、作り上げられていくもの。
善意はこの世界を知らなければ知らないほど芽生え、作り上げられていくもの。
あらゆることを知ってしまうからこそ、善意のもとでなされる行動がおかしいと思われるようになったり、その行動をすることになぜか恥ずかしさを抱くようになってしまう。
比較して自分が優越感や劣等感を抱いたり…。 でもそれが町田くんには全然理解できないのである。

当然である。
町田くんは携帯を持っていない。
町田くんはこの世界のことをほとんど知らない。
町田くんはこの世界とこの世界に生きる人が幼少期のあの記憶のままで止まっている。
町田くんにとってこの世界とこの世界に生きる人は善意で満ちているのだ。

だから町田くんにとって、この世界に生きる人は誰でも好きで、大切な人になる。
だからその人のために助ける。
そしてたくさんの人が救われるけど、家族としての好きと恋愛としての好きに悩まされることになり、時に人を傷つけてしまう。

でもそれは町田くんのせいなんかじゃないのを知ってるからこそ、誰もが自分を責めてしまわざるを得ない苦しみが生まれることが諭されている。

そこで大事になってくるのがイマジネーションである。
いかにその人の気持ちに立って、行動をすることがてきるかどうか。
でもこれも相手を一人に絞る恋愛となると、他の人との関わり方に悩むことになる葛藤もある。
誰にでも優しくしたい思いと愛を独占したい思い(好きな人と付き合いたいという思い)の葛藤。
これがトレードオフになってしまうことに切なさがある。

これはこれで別の悩みとしてしっかりと描かれていて、結果的に猪原にも受け入れられるようになっていくのがよかった。

町田くんには何もなかったからこそ、純粋な善意のみで生きていけていたのである。
人と比較することもないし、自分がどう思われるかどうかはそもそも頭になく、ただただ周りの人たちが好きだから困っていたら手を差し伸べる。
そこには過度な競争に晒されず、相互扶助が前提の上であるからこそあの町田くんが創り上げられたのだろうと推測できる。
スポーツができなくても、勉強ができなくても、自分を否定されない安心感、いわば比べられないことで芽生え育つ心理的安全性。
ほとんどのコミュニティでは、そうなっていないから、現代の世界には町田くんが、町田くんの世界そのものが、ファンタスティックに見えるのであろう。

自分の創り上げたいと思っていた世界は、まさにこの「町田くんの世界」だった。
色んなことを知ってしまっても、この世界のことをとことん好きになれる人が少しでもいるのであれば、小さいコミュニティからでも、徐々にこのような世界を広げていけるのではないか。それを創っていきたい。

映画の中なので、まさしくユートピアではあるが、徐々に変わっていく町田くんを取り巻く周りの人たちを見て、最後にみんなから応援されている町田くんを見て、物凄い心が満たされた。
本当は心の底ではみんな町田くんの世界を求めているのではないだろうか。
そうあって欲しいと思うだけで、現実はそう甘くはないか。どうだろう。

もっと余裕を持って、全てが善意のもとに、生きていきたい。
そのための行動を起こし、そんな世界を現実に創り上げたい。
強くそう思った作品でした。
暫定今年度ベストで好きな作品です。

P.S.
この内容で、さらにこれだけ個性派で実力のあるキャスト陣が、それはもう全員活きまくってる。
前田敦子の拍子抜けしたツッコミセンスと絶妙なコミカルさ、太賀の熱量極まる暑苦しさ、高畑充希の好かれるためだけに生きているような女性像、池松壮亮の悪意と善意に揺れる葛藤、岩田剛典の達観した余裕から来るひん曲がった王様感。
戸田恵梨香松嶋菜々子の諭す優しさ、北村有起哉の器の大きさ。
全てがこの物語に意味を成している。
そこに初々しさのある細田佳央太と関水渚の絶妙な演技。
賛否分かれるとは思うんですが、横道世之介が好きな人は絶対好きになれると思います。

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