Cinema Life Career

映画紹介を中心に、仕事観やキャリアについてなど、世界観や見えていること、日常の中で感じていることを徒然なるままに綴っていきます。

【映画】バーニング 劇場版 〜彼女は一体、なぜ消えたのか?〜

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バーニング 劇場版(Burning)

彼女は一体、なぜ消えたのか?

村上春樹原作の短編小説『納屋を焼く』を、韓国のイチャンドン監督が映画化した作品。

どんでん返しミステリーかと思いきや、また新たな私的映画の扉が開かれたよい意味で裏切られた現代社会のメタファー的極上ミステリー映画であった。

 

一つの閉ざされた世界で起こる1人の女性を取り巻く対比された男性2人の三角関係が織りなす物語は、韓国における現代社会(格差社会)の縮図となっている。

個人的には、ヘミがなぜ消えてしまったのか(行方不明になってしまったのか)に着目しつつ、主人公であるイ・ジョンス(ユ・アイン)に極限にまで感情移入して鑑賞することをおすすめします。

小説家を目指すためにバイトで生計を立てながら暮らすジョンスは、ある日偶然に幼馴染であるシン・ヘミ(チョン・ジョンソ)に出会う。
2人はとんとん拍子に関係が進んでいき、ジョンスはヘミに夢中になっていく。

 

ヘミがアフリカへ旅行をする間、猫の世話を頼まれたジョンス。
律儀に猫がいない家を訪問しては、いない猫に餌を与え続ける。

ヘミがアフリカから帰ってきて、謎の男ベン(スティーブン・ユアン)を紹介される。
ベンはヘミとともにジョンスの家を訪れて、意味深な秘密をジョンスに暴露する。
そこから、ジョンスは嫌な予感を感じ始めて…

 

それがあると思い込むのではなく、そこにないことをないと思う。
冒頭ではどう捉えたらよいか意味がわからないこの言葉が、本作においてとても重要な意味をなしていく。
人はいて欲しい存在がいないときに、それがあると思い込む(妄想する)ことで、何とか自分を保とうとすることがあるが、それだと何も進まないし変わらない。
ないことをないと思うことから、やっと人は進み、変えるきっかけを掴み取ることができる。
まずないものをないものとして受け入れることが必要。

あらゆるメタファーなる表現を、全てそのまま受け取るジョンス。

(ネタバレになるので具体的な事象は控えますが、)小説家を目指しているのにも関わらず、想像力に欠けており、メタファー(隠喩)の意味すらも知らない。
要は結局見栄で、小説家としての仕事は、本作の中で何一つ前進していない。そこに縋れていない。

メタファーを並べつつ各人の人となりを描いていきながら、じわじわと1人の女性を軸に、完全に対比となる2人の男性像の前提の違い(格差)によって引き起こされるある事件が起こったときにとるそれぞれの異なる対応からズレていくお互いの切迫さや距離感や思い、そして噛み合わない会話により、更なる勘違いを生み、ラストの悲劇に繋がっていく。

 

生活がギリギリで余裕がなく縋るものがヘミしかないジョンスと裕福で遊んで暮らしつつ人間関係にまで余裕のあるベン。

会った瞬間にあからさまに敵わないことを悟ったジョンスは、入る余地のないヘミとベンの2人のやりとりに笑って合わせながら、時に少しばかりの見栄を張ることしかできずに、もやもやだけが募っていく。

さらに中盤から終盤にかけてのヘミが消えて(行方不明になって)からのお互いのそれに対しての行動や言動、対応が真反対でさらにお互いのあらゆるものの行き違いが格差社会の闇としてどんどん浮き彫りになっていく。

その行き違いはジョンスに固定観念(囚われ)をもたらすことになり、それがエスカレートしていく。

それはもはやジョンスがストーカーに見えるくらいのヘミへの執着で、それ以外のことを全く考えられることができていない。
かたやでベンは次の女性にヘミと全く同じ形で打ち解けていっている。
ここから両者における明確な違いが浮き彫りになってきていて、両者の違いから「それがあると思い込むのではなく、そこにないことをないと思う」にまた立ち返らせてくれて、その意味がより広がり深まっていく。

ステータスの欠乏(ジョンス)と愛の欠乏(ベン)。
ミステリーに見せつつ、現代社会の現実をリアルに見せてくる社会的側面からも考える余地がありまくり、文学性もあるとてつもない作品。

復讐における殺人ってこういう感じで起こってるものがたくさんありそうな気がして実に怖い。

これは鑑賞する人によって、捉え方が全く異なるであろう。
主人公に感情移入したときに、対ヘミと対ベンをどのように見るかで全然変わってくる。
色んな側面から物語を捉えると幾ばくにも広げて深めることができるとても奥深いスルメ映画。

 

基本視聴者に委ねるスタンスで、何も伏線は回収されない。
だからこその深みと重みから来るおもしろみをしっかりと感じ取れる作品となっている。

邦画だと『三度目の殺人』や『ゆれる』に近い感じ。
カンヌっぽかった!

P.S.
キャスト初見ばかりでしたがよかったです。
ユ・アインの冴えなさとスティーブン・ユアンのモテオーラの半端なさと何よりチョン・ジョンソの確かにどちらもに振れそうな女性像。
キム・コッピやキム・テリを彷彿とさせる女優さんだなと思いました。

 

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