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【映画】判決、ふたつの希望(THE INSULT) 〜ただ、謝罪だけが欲しかった〜

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判決、ふたつの希望(THE INSULT)

ただ、謝罪だけが欲しかった


ほんの些細な口論から始まった事件。
人種の違うことで起こる様々な背景から、お互いが自分の信念を譲られないことで、話が大きくなっていき、メディアや国全体にまで浸透していくことになる。

 

最初は謝罪だけが欲しかっただけなのに、法廷に持ち込んで、弁護士が絡むことで、人種問題や差別問題といった社会的な問題に波及していく様は、現代の日本ではなかなか想像ができない。

それは日本が島国であり、移民が入ってきたりすることで、多国籍が入り交じるような複雑な国家ではないからそうなだけであって、国によっては本当にこんな小さいことで、度を超えたにらみ合いが勃発し、問題が膨らんでいくんだなと衝撃的だった。
特にレバノンは、過去のこともあった上での移民の受け入れがあるだけあって、よりシビアな感じが物凄く伝わってきた。

 

自らの正義を振りかざすことで、法廷で争うことになってしまった2人は、正直ここまでのことは望んでいなかったが、それを大袈裟に荒立てるのは他ならぬ私欲にまみれた人たちの存在であって、何かのためと表向きでは発してるけど、どうしてもそうは見えない法廷での横行と本当に自分事として問題を解決しようとする人たちが、複雑に絡み合ってる中でもわかりやすくちゃんと描かれていたのが凄く、完成度が非常に高い作品であった。

本当に些細なことから始まったものであるため、日本だったら双方が謝罪して終わること。

それで終わらずに、両者が一触即発になり、かっちりと対立構造ができる形で、ここまで広がっていくのは、レバノンパレスチナの複雑な問題が絡み合ってることを裏づけていて、だからこそこのような白黒つけるのが難しい問題の解決の糸口をどう掴んでいくのか、を色んな切り口から考えさせられる。

そこには、個人対個人では決して片付けられない過去の問題や今の問題が、想像を超える形で入り交じっていた。

 

どのような形に落とし込まれていくのかが、中盤以降にならないと見えてこないが、終盤にかけて徐々に糸口が見えてきて、「ふたつの希望」に落とし込まれていく。

個人間のいざこざが大きく広がっていたが、結局は個人と個人で、どちらもが痛みを伴っている。
その痛みに対して、どちらの方が大きくて、どちらの方が小さいかという大小の比較そのものがナンセンスで、それは結局主観に委ねられてしまう。

 

それであれば対立するのでなく、痛みわけをしてお互いがお互いの痛みをわかち合うことで解決をしていこうという、今作の制作側なりの答えはとても納得感があり、腑に落ちてきた。
きっかけは確実にあの車のシーンだっただろう。
あのシーンなしにこの映画は完成しないくらいの意味のあったシーンだった。

そこから当人同士の問題に対して、それぞれが出した答えを周りが温かく受け入れて、全力で後押ししていく展開に涙が止まらない。
そこにはすでに自らのエゴが入り込む隙がなくなっていて、本当に理想的な「ふたつの希望」としての判決が確定していった。

 

途中どうなるのか、と思ったけど、終盤の倫理観から来る善悪に対して、当人どちらもに寄り添いながら、途中自らの非をも一人の人間として不器用ながらも、認めていきながら、あの結果に導いていく展開が非常によかった。

未だに諸外国では人種、宗教、言語、価値観、過去、背景など、様々な問題が絡み合ってるだろうけど、人と人が関わるときはそれは一旦置いておいて、フィルタを外して、人としての尊厳を大切にして、関わっていくことが必要だと改めて感じた。

 

多様性の共存。
今こそ実現に少しずつでも進んでいって欲しいし、その希望が垣間見える作品だった。

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