Cinema Life Career

映画紹介を中心に、仕事観やキャリアについてなど、世界観や見えていること、日常の中で感じていることを徒然なるままに綴っていきます。

【映画】楽園 〜ひとすじの光を君にみた〜

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楽園


ひとすじの光を君にみた。


Filmarks試写会にて鑑賞。


自分にとっての楽園とは、彼らにとっての楽園とは、そしてひとすじの光とは。


ストーリーテリングがとても上手で、徐々にタイトルとキャッチコピーの意味を明らかにしてくれる映画としてのおもしろさと題材として伝えたいことのわかりやすさとがある。


重ための題材で、多くは語らずにここまでわかりやすく、色んなことを考えさせられる映画はそんなにない。

それゆえ深さの点においては若干物足りなさは残るが、楽園を求める人たちの人物描写とそれが起こる背景の部分をじんわりと色んな方向性から彼らの末路とともに訴えてきていて、考える余地を与えてくれるところもしっかりあり、基本的にはよかったです。


限界集落の閉塞感とそこから来る村民たちの思考の浅さと視野の狭さ、古い慣習への執着、無駄なプライドや見栄に嫌気がさしてき、苛立ちが募っていく。


心優しき者が犯罪者に陥っていく原因は、明らかに周りや環境によるものが大きいであろうことが本作には描かれている。


物事を一方向からしか見ることができない視野の狭さ、レッテル貼り、苛立ちが浅はかな暴力にしか転化されない容赦なさ、しょうもない見栄からその村で絶対に必要であろう人が村八分にされる様、何より言動や行動においてされた者の先がどうなるかを考えずに平気で第三者にしてはいけないことをしてしまう想像力のなさ。

最後のが決定的であった。そりゃあこんな村には誰も住みたくなくなるだろう。

自分が楽になったり気持ちよくなることしか考えられていない。

過去に囚われすぎて前進も変化もできない。


今にも過疎化が進んでいて人が住んで欲しいと言っている地域がもしあって、仮にそこがこの映画に出てくるような人たちばかりが集まってるとしたら、それはもうそこにいる人たちの人間性に問題があるから、そこから直さないと何も始まらないよねと思う。

それくらいその標的にされてる人たち(主に豪志とその母、紡、善次郎)を見てやるせなくなった。


また、本作は意外と綾野剛演じる中村豪士ではなく、紡(杉咲花)と善次郎(佐藤浩市)に着眼されている物語であったが、それが逆によかった。

それによって状況が多方面から浮き彫りになっていき、視野が広まった上でラストにそれらの物語が繋がりあっていき、作品全体により濃密性とメッセージ性を感じられ、物語の意味が明確になっていってたから。


サスペンス要素は確かにあるけど、そこに関してはあえて濁して言い切らずに、鑑賞側に考える余韻を与えてくれている。

その皮を被ったヒューマン映画である。


ここからは個人的見解におけるネタバレなので読むのご注意ください。


楽園とは、天国のように誰もが救われる世界のことであると自分は捉えた。

それはここではないどこか、という意味合いの言葉を紡→豪士に投げかけていたシーンからも読み取れる。


閉塞的な限界集落では、弱き者が容赦なく救いがなくなってくることがよくわかり、相手のことを考えられない人たちとの人間関係における面倒臭さがさらにその容赦なさに拍車をかけている。

そこに対してのアンチテーゼとしてのタイトルの「楽園」であり、だからそれは天国だと捉えられるかなと。

でもラストの方に出てきた愛華があれならば、東京(閉塞感のない都市)こそが「楽園」であるとも捉えられる。


そして犯人はしっかりと言及されてはいないがやはり豪士となるのかな。

あそこで結局はっきりと犯人は言及されていないのだが、豪士にとっての楽園は天国であるとの描写が中盤にあり、そこに愛華ちゃんを連れて行ったのではという捉え方があるシーンからできる。

まあでもこれも書いてる通り、愛華のあのシーンをどう捉えるかでまた変わってきそう。


そもそも愛華が亡くなったかどうか、連れ去った犯人の事実は明確にはわからなかったので、あくまで推測でしかない。


そしてひとすじの光。

豪士にとっては洋子(黒沢あすか)であり、紡にとっては豪士であり、善次郎にとっては久子(片岡礼子)であるように思えた。

だが、中盤以降の展開でそれらが変わっているような感じがする。

豪士にとっては愛華であり、紡にとっては広呂(村上虹郎)であり、善次郎にとっては亡き妻紀子(石橋静河)であるように変わっていったようだった。


それもまた救いようのなさを表しているようで、本当はそう変わるのはよくないことであるということを、メッセージ(伝えたいこと)として上手に入れているように感じる。


亡き者にしか縋ることができないと人生は破綻していく。

それでいくとやはり紡と広呂の関係性は結局なくてはならなかったもので、それだけが希望であり救いであった。


文字に起こしてみるとこの映画の凄さがわかった。

今年は本当によい映画が多すぎるので、それらと比較しちゃうとやや影を潜めてしまう感はあるけど、とてもよい映画でした。


他の年なら全然上位に食い込んで来そうな作品です。


P.S.

綾野剛杉咲花に至っては演技の新たな境地が広がった感じがするくらいによかった。

綾野剛は本当に繊細。あんなに荒い役をこなすのにこんなに繊細な役もこなせる幅の広さに改めて凄みを感じた。

杉咲花は感情を押し殺すシーンと溢れ出てしまうシーンどちらもをしっかりと表現できていて凄い。細かいところまで抜け目がない。

あとは佐藤浩市はもちろんのこと、柄本明もね。

あの苛々するけど、責めきれない人の表現がうますぎる。

それ以外のみなさんもとてもよかったです。