Cinema Life Career

映画紹介を中心に、仕事観やキャリアについてなど、世界観や見えていること、日常の中で感じていることを徒然なるままに綴っていきます。

【映画】蜜蜂と遠雷 〜4人のピアニストたちの美しすぎる邂逅〜

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蜜蜂と遠雷

私はまだ、音楽の神様に愛されているだろうか?

物凄くよかった。
若き4人のピアニストたちの邂逅により、それぞれの新たな境地に行き着いた音楽が創り出されていく。

音楽(何か)を突き詰めた天才たち(あちら側の人たち)にしかわかり得ない関わり合いとそうじゃない人たち(こちら側の人たち)でないと与えられないものの影響。
天才とそうでないものの視点の違いや歴然とした差を表しているような表現はあるにせよ、天才を痛みを伴わない神のような存在として扱わないのがよかった。
天才に対しての嫌味たらしさが全くないのも素敵。

並外れた結果を残す人たちは、天才と一括りにされてどこか普通の人とは違う人のように扱われることが多く、良くも悪くも特別な存在となるのが世間の大半の見方であろう。

ただ本作は、その裏で天才たちがとてつもなく人間らしく映し出されているのが印象的であった。
ある者はただただピアノを純粋に心の底から楽しんでいて、ある者は自分のやりたい音楽と求められている音楽の葛藤に悩んでいて、ある者は過去のトラウマから抜け出せずに苦しんでいる。
当たり前ではあるが、天才も人間である。
こちらで勝手にそう名付けているだけで。

じゃあ天才と言われる人たちは何が違うのか。
それは、それだけを突き詰めて生業にしていく覚悟を持つことができるか、それをどれだけ苦しくても逃げずに向き合い続けることができるか、どんなことがあっても初心を忘れずに楽しみ続けることができるか、の違いであると感じた。
そこまでのめり込めるほどのものに出会えるかどうか。
それが結果的に神様に愛されるかに繋がっていく。
いや、むしろ神様は初めからおらず、それはただの結果論でしかないのかもしれない。

努力と才能と覚悟。
才能は持って生まれたものというよりも、それを楽しみ続けられるものと出会えるかどうかに依存し、それにより開花する。
それが大事であると同時に、誰もが誰かにとっての天才になり得る可能性を示唆しているように感じた。

一人だけ天才では無き者として、生活者だからこそ鳴らせる音楽があるという信念を持ち、そこに向き合い奮闘する高島明石(松坂桃李)には物凄く共感できた。
それだけじゃなく日常的な生活を営むからこそ、その部分を取り入れながらでしか成せないそこだけを極める人たちと違う何かを残せるのではと自分も思うから。
たとえそれが妄想やただの理想だとしてもそれに縋っていたい気持ちもわかる。

そして、4人がただただトップを目指し、誰かを陥れたり、一触即発な空気を出したり、お互いの足を引っ張り合うような関係からでは、絶対にそれぞれがこの境地に行き着くことができず、ここまでの感動が生まれることはなかった。

ただひたすらによい音楽を求めて、高みを目指して、それぞれがそれぞれに敬意を払い、ポジティブに交わっていくからこそ生まれる相乗効果による成長と辿り着いた境地がとてつもなく美しく、ラストに進むにつれて感動が止まらない。

ピアニストとして演じているのは1人のはずなのに、そこには4人全員が共鳴しているように感じる。
音楽に物語とそれぞれの想いが乗ってくると、さらにこんなにも美しく感動に繋がっていくのか。
クラシックを詳しくわからなくてもこみ上げてくるものがあって、自然と涙が出てくるラストの栄伝亜夜(松岡茉優)の演奏。

感情や思いを言葉に変換することで受け取りがちになる自分は、音や映像そのものがコミュニケーションツールになることはなく、言葉にしないとコミュニケーションは基本的にはとれない。

音と音でわかり合えるあちら側の世界とはこういうことなのか。
そこを突き詰めたものでしか成せない音を介してのコミュニケーション。
言葉にはならない何か。
わかりきれるわけがなかったけど、何か圧倒的なものを感じた。

それでもみんなそれぞれ自分のことを特別であると感じていなくて、普通の一人間であると思っている。
そういう天才たちの描き方も物凄くよかった。

所々であちら側の世界を描きつつも、基本的にはこちら側の世界を軸に、あちら側を描くからこそどこか共感できて、こちら側の世界の人たちにもしっかりとイメージし、享受することができる物語となっている。

原作ありきだとは思うが、それを体現してくれたキャスト陣とスタッフ陣、そして石川慶監督にただただ感服。

 

天才をただただ天才として描かずに、それぞれが交わることによる成長とそれでしか辿り着けない境地をこんなにもしっかりと美しく映し出せるのは本当に凄かったです。
あの終わり方がまた余韻を残す感じで、たまらなくよかった!

これからはクラシックをもっと楽しむことができそう。

P.S.
ひいきとかなしに、松岡茉優は主演女優賞いけるんじゃないでしょうか。
キャスト特に4人が本当によくて、この世界に没入できました。

 

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