Cinema Life Career

映画紹介を中心に、仕事観やキャリアについてなど、世界観や見えていること、日常の中で感じていることを徒然なるままに綴っていきます。

【映画】真実(La Vérité) 〜人と人の関わり方の理想〜

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真実(La Vérité / The Truth About Catherine)

ママ、あなたの人生 嘘だらけね

やっぱり是枝裕和監督の描く家族の形(あり方)は本当に好きだ。
家族関係の中に優劣をつけずに、各々が思っていることを率直に伝え合う。
でも気を遣う場面ではとことん気を遣う。
関わり方が成熟しているから、観ていて徐々に多幸感に満ちてくる。
そのシーンは確かにあったけど、キャッチコピーのような嘘を軸に、子から母を責めていくような作品ではなかったです。

リュミール(ジュリエットビノシュ)の母親であるファビエンヌ(カトリーヌドヌーヴ)が、自伝本を出版し、事実として書かれていないことがあり、そこに対してリュミールが不信感を露わにしつつ、隠されていた親子の秘密が暴かれていく物語。

ここに至るまでの家族の関係はもしかしたらよいものだとは言えなかったのかもしれない。
家族の中で秘密を抱えながらそれぞれが生きているのもそうであるし、ファビエンヌとリュミールも考え方や性格が全然異なっていることから、噛み合わなかったことも多かったんじゃなかろうかと予想ができる。

それでも本作で描かれていたのは、そのようなネガティブな家族関係ではなく、それらをも包み込むようにお互いが接し合う家族関係であった。

お互いがお互いの好きでない部分はあるにせよ、憎み合ったりするのではなく、仲がよくお互いがお互いを受け入れ合っている。
まさに一人の人として、どのような人間性をも受け入れ合いながら、でも率直に思うことは伝え合う素敵な関係性であった。

ちゃんと踏み込んでもよいラインや年齢(人としての成熟さ)を加味した上で、人と関わっている各々のやりとりは、見ていてとても心地よかった。

それぞれが自分のことをちゃんと認識できているからこそ、人との関わり方をしっかりと考えることができ、言われたことに自分の意思を入れた反応をすることができる。
そうやって会話が成り立ち、関係はよりよく前進していく。
こういう人と人との関わりって理想。
ちゃんとお互いがお互いを信じ合えていないとできない。

ファビエンヌは自叙伝に真実を書き残した。
本作における「真実」とは、出す対象が受け取ることを考慮して、一番よい形である事実を切り取った上で出すこと。
自叙伝では家族ではなく、あくまでファンやその書籍を享受する人たちのために書いてるからこそ、家族にとっての真実はひた隠しにされていた。

 

でも物語が進むにつれて、家族にとっての真実を自分の言葉でしっかりとリュミールに伝えていく。
ここがとても印象的であった。

家族であってもこんなに率直に思っていることを伝え合えることってそんなにできることではないんじゃなかろうか。
相手のために、自分のために、伝えるべきことはしっかりと伝える。
でもそのタイミングはしっかりと見極める。
簡単なようで難しいけどとても大切なこと。

人と関わっていく中で気をつけたいこと、家族関係、はたまた人間関係としての理想を感じることができた。
強さと優しさをはじめ、対になることが多い両者でも共存し得る。
そんな可能性がしっかりと描かれていた。

そして、あくまでフィクションとしての演者である誇りを持っていたファビエンヌは、演技を現実とは相入れないものとして捉えていたが、結局演技をする上で現実に最も感化されていったラストは圧巻だった。
あそこは是枝監督の価値観が滲み出ているシーンだったなと。

題材が嘘から始まるようなものや重たいものでも、基本的に性善説をもとに人と人の関わりを描く形はブレない。

以前是枝監督の記事を読んでの感想を書いたとき、「色んな世界観が共存される多様性のある彼の理想的な世界を描くような作品を観てみたい」と書いた。
大きい世界のものではなかったけど、色んな価値観や考え方が共存される多様性を受け入れ合う家族の形(小さい世界)は、本作で見事に表現されていたように感じる。

やっぱり是枝監督は大きい世界ではなく、小さい世界にスポットライトを当てられる方なんだなと改めて思った。

権力が支配する社会は理不尽が横行するが、情緒のある人間的な関係の中、その最たる例としての「家族」には、温かな素敵なものが広がっている。
そんな理想と現実がスクリーンに映し出される。

本作は、一つの家族を理想的な人間関係のメタファーとして投影しているような感じであった。
この設定で、見ていてこんなに心地よいものが作れるんだなーと。

海外に行っても相変わらずの是枝監督でよかった。

 

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